実話を元にした面白い映画だよ、という
評価を聞いて、観に行ってきた。
『ゴヤの名画と優しい泥棒』
面白かった。
60年代、田舎で年金生活を送る名もなき主人公(おっちゃん)の主張は、
BBCを無料で受信できるようにすること。
なぜなら、戦争や貧困で社会から切り離された当時の
高齢者にとって、テレビは孤独を癒やす最大の娯楽だから。
受信料を払わず、刑務所にぶち込まれても、
自分の主張のために活動を続ける。
そんな折、ゴヤの名画「ウェリントン公爵」が
ロンドン・ナショナルギャラリーから盗まれた。
特殊部隊の仕業だと考えられていたけど・・・。
おっちゃん、このゴヤの名画の身代金で、
貧しい高齢者たちの受信料を肩代わりしようと考えていた。
テンポのいいストーリー展開で、じつにハートフル。
だけど単にハートフルなだけではなく、私にとっては
「公と私」「個とは何か」を考えさせる映画だった。
主人公は、偏屈だけど「私心」がない。
だから保身もなく、周囲の目も気にしない。
誰が何と言おうと、弱き者を助けようという
「公心」に裏打ちされた強烈な「個」がある。
それで職場をクビになっても動じない(←これ、相当すごいことよ)。
社会の弱者にしか目がいかず、
「家庭を大事にしろ!」と妻から敵意むき出しに
されても、生き方は変わらない。
名画の身代金を、ちょっとぐらい自分の懐に入れよう
などとも考えない(私ならその算段をするだろう)。
裁判で弁護士が「彼は良き隣人だ」と言う。
確かにそうだ。
でも、こういう強烈なキャラが隣にいたら、、、
それはそれで面倒臭いだろうなあと思う。
でも、みーーんな横並びで自粛やマスクをする
日本の社会にこそ、公の心をもった強烈な「個」が必要だ。
せめて私は、それを排除しようとする人々を
批判する眼だけは持っていたい。
そんなことを思わせる映画だった。
ちなみに、映画を見た人の感想では、
BBCの無料化を訴える主人公のおっちゃんと、
「NHKをぶっ壊せ!」と主張する日本の某党を
同一視する向きもあった。
けど、後者は破壊衝動に駆られた大衆の発想だ。
映画の主人公は、高齢者のためにBBCの無料化は訴えても、
BBCをぶっ潰せ、などとはひと言も言わない。
そんなこと思ってもいない。
良き隣人とは、良き庶民でもある。
表面的な事象だけを見ていると、それに気付かない。
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